(31)日本、水ビジネスに挑戦する
水のことなどあれこれ(31)
−日本、水ビジネスに挑戦する−
「中国の水ビジネスの市場動向」に続いて、2010年6月23日、24日に東京・芝公園機械振興会館にて、「東南アジア水ビジネス」の講座が開催される。都市化と経済成長が著しく、中国に次ぐ生産拠点として、注目されるベトナム、カンボジア、タイ、インドなど東南アジアでは、深刻な水汚染、水不足が顕在化し、日本の企業にとって、大きなビジネスチャンスが到来するという。

中村吉明著『日本の水ビジネス』(東洋経済新報社・2010)には、現在、石油と同様に水は貴重な資源となってきたと指摘する。水ビジネスには、淡水が得られない国や地域に
飲料水確保のための海水を淡水化するシステム、また、蛇口をひねれば水が出てくる飲料水供給システム、我々が使った水の排水システム・水処理システム、農業用水供給システム、工業用水供給システム、半導体を製造するのに必要な超純水の供給システム等があげられる。世界の水ビジネスの市場規模は、2007年時点で、31.4兆円、2025年に63.1兆円になると見込まれている。

海水淡水化施設は、今後新たな建設が十分期待される。それにはRO膜を活用した膜法の海水淡水化施設が主流を占める可能性が高く、また下水処理の分野でも小規模で浄化能力の高い膜式活性汚泥法のような膜を用いた処理施設が注目を浴びてきた。このような膜技術に日本企業は強い分野である。RO膜を作っているのは、日東電工、東レ、東洋紡である。
ここで、水ビジネスにおいて海外で進出している富士化水工業株式会社があげてみる。富士化水工業は、1980年代から、日本メーカーの海外への生産拠点の移転に伴い、産業排水装置等の製造、販売、メンテナンスを行うために海外へ進出。海外進出に際しては、現地に技術やノウハウを移転することを基本として、1989年に初めて台湾に進出後、マレーシヤ、フィリピン、中国、タイ、ベトナム、インドネシア等に展開している。

水ビジネスにおいて、欧州企業のヴェリオ、スエズ、テムズはウォーターバロン(水男爵)と呼ばれ、19世紀からの水道事業の経験を踏まえ、世界各国に進出している。さて、日本の水ビジネスの弱点について、日本企業は膜技術など個別の技術は世界的に優れたものを持っているが、水道事業全体の運営・管理サービスの実績に乏しいため、海外で十分な市場と収益を確保できていないと、指摘する。韓国の水ビジネスは国を上げて取り組んでいるのが強みである。そこで、日本においても、組織的に産・官・学・市民の複合した総合力が必要だと説く。具体的には「チーム水 日本」をたちあげ、世界への水ビジネスに参入し始めた。
このような水ビジネスを論じた、服部聡之著『水ビジネスの現状と展望−水メジャーの戦略・日本としての課題』(丸善・2010)、吉村和就・沖大幹著『日本人が知らない巨大市場 水ビジネスに挑む』(技術評論社・2009)が発行されている。
(H22.5.29 古賀河川図書館)
(32)下水道ビジネスの商機
水のことなどあれこれ(32)
下水道ビジネスの商機

『下水道はいま、国内で約7割の人口に普及し、総延長で約41万キロに及ぶが、老朽化がすすみ、更新や補修の必要性が高まっている。下水道を長持ちさせる新たな技術、処理場にたまつた汚泥をエネルギーに変える環境技術などが、あらたなビジネスを生み出す可能性を秘めている。』

『環境技術として次のことが挙げられる。全国の下水処理場で発生する汚泥は、年223万トン。これまで産廃処分場に埋めていたが、神戸市では、2年前から汚泥からでるメタン瓦斯を精製し、天然ガス自動車の燃料として販売している。このガスを都市ガスに替えて使う実証実験も始まる。岐阜市では、汚泥から肥料などの原料になるリンを回収する事業を始めている。』
さらに、世界へ向けての下水道ビジネスに、以下のように掲げている。
『経済産業省などの試算によると、世界の下水道の市場は2025年に計35兆円まで拡がる。このうち建設や設計関連が21兆円、管理、運営サービスが14兆円である。世界には売り込む要素は、特殊の膜を使った下水の濾過技術、下水管用の穴をモグラのように掘り進む工法、日本が持つ技術は世界トップレベルである。政府は成長戦略の一つに下水道のインフラの海外展開を行なう。インド政府が下水管の補修技術に関心を寄せている。2010年7月には、ベトナムと下水道関連技術を輸出する協力協定を締結する。国際競争に勝つためには、総合的な技術力を売り込む体制が必要である。相手国の要望に合わせて、簡易で安価な下水道システムを提供する柔軟さも求められている。』
以上、下水道ビジネスの商機について、紹介してきたが、このことに関し、鶴蒔靖夫著『下水道ビジネスの新発想』(IN通信社・2008)がある。また、水処理については、和田洋六著『よくわかる最新水処理技術の基本と仕組み』(秀和システム・2008)もある。下水道ビジネスを含めた水ビジネスは、いま世界的に注目の的になっている。わが国は、これらの水ビジネスに参入し、経済成長を図りたいものだ。
(H22.6.27 古賀河川図書館)
(33)鳥瞰図で川をみる
水のことなどあれこれ(33)
鳥瞰図で川をみる
河川に係わる書籍は、治水や利水や環境を論じたのが一般的であるが、児童のための河川の書も多く出版されている。児童書は大人が読んでも面白いのが良い。
村松昭さんは、日本の川シリーズで、立体的に、鳥瞰図的に、川を捉えている。いままで、『たまがわ』(2008)、『ちくまがわ・しなのがわ』(2010)、『ちくごがわ』(2009)の3冊が偕成社から出ている。なかなか川を源流から河口まで追うことは、困難であるが、この書を抱えて、水源地から下流に向って、歩くことも面白いし、逆に河口から上流へ行くことも興味が惹かれる。


多摩川を下ってみよう。多摩川の水源は「みずひ」といわれ、ここから羽田空港の東京湾までの138キロの旅がはじまる。やがて奥多摩湖・小河内ダムにはいり、左岸にJR青梅線と並行に流れ、しろまるダム、羽村の堰に至る。秋川など幾つかの川を合流しそれから京王線、JR武蔵貨物線、京王相模線、小田急線を横断させて、やがて東京湾へ注ぐ。その間、釣り人や、犬と散歩する人、川遊びの子供達、キャンプをしている人、絵を描いている人も多摩川を楽しんでいる。また、カモシカ、ツキノワグマ、ニホンザルなどの動物、クマタカ、オオルリ、フクロウ、ヤマツバメ、セグロセキレイ、アカグラ、コノハズク、イワツバメ、カワセミなどの鳥たちも描く。多摩川流域では、人だけでなく、動物も鳥も魚も生きている。

多摩川と同様に、次の2つの川も鳥の目になって追っている。全長367キロ日本一長い千曲川・信濃川は、源流甲武信岳から新潟市の日本海へ注ぐ。そして全長143キロ筑後川は、有明海河口から遡り、阿蘇・久住の水源の旅を描いている。
中国の川を歩いた人の話であるが、中国の人は、川はあまりにも長く、交通も不便なため、源流から河口まで行った人はほとんどなく、川は目の前に流れている感覚のみであるという。
(H22.6.28 古賀河川図書館)







